Three.jsのパフォーマンスTips

2018/03/14
このエントリーをはてなブックマークに追加


はじめに

こんにちは。お弁当盛りつけ係のあんどうです。



先月のことですが、ウェブ/ゲーム開発者のJack RugileさんのTwitterでの「Three.jsに関するパフォーマンスや効率化のためのTipsや工夫をみんなでまとめよう!」という呼びかけに対して、なんとThree.jsの作者であるmr.doobさんが「すぐに思いつく10のこと」を直接回答してくれていました。

せっかくなので簡単に説明しながら紹介したいと思います。

その1

「できるだけGeometryMaterialを再利用する」

同じ形状やテクスチャのメッシュが複数ある場合に、それぞれのメッシュ用にGeometryMaterialをインスタンス化してしまうとその分メモリも食いますし、GLとのデータのやり取りや状態の変更が無駄に発生します。特にマテリアルについては

new THREE.Mesh(
  geom,
  new THREE.MeshPhoneMaterial({color:0xff0000})
);

みたいな感じで、ついメッシュ作成時に合わせて作成してしまうこともあるかと思いますが、パフォーマンスが気になるようならそういったことは避けましょう。

その2

「できるだけGeometryではなくBufferGeometryを使用する」

Three.jsでパフォーマンスを気にする場合の鉄則です。BufferGeometryを使用することでプロパティへのアクセスが若干面倒になりますが、そのかわりに内部的なGLとのデータのやり取りを大幅に減らすことができます。

その3

「できるだけMeshBasicMaterial(ライティングを考慮しないシェーディング)とMeshLambertMaterial(頂点ごとのシェーディング)を使用する」

テクスチャで雰囲気を出せてライトの影響を考える必要がなければMeshBasicMaterialを使いましょう。ライトの影響を考える必要があればMeshLambertMaterialが一番軽量です。マットな質感で問題なければMeshLambertMaterialを使いましょう。

その4

「シーン内のライトは少ないほどいい」

CGとは要するにライティングの計算です。少ないライトで済むならもちろん少なく済ませましょう。

その5

「できるだけシーンのライトをテクスチャに焼き込んでライトマップとして使用する」

その4と関係して、ではどうやってライトを減らすかという話ですが、可能なら事前に影を計算してテクスチャにし、そのテクスチャをマテリアルのライトマップに設定しましょう。

let lm = new THREE.TextureLoader().load('lm.png');
new THREE.MeshBasicMaterial({lightMap:lm});

その6

camera.nearcamera.farはできるだけシーンぎりぎりになるように維持する。1単位が1メートルであることも覚えておく」

カメラには描画対象の領域を設定できます。描画対象領域が広くなるということは、その分レンダリングの負荷が増えるということです。近平面と遠平面はデフォルトのままにせず、シーン内部に含まれるオブジェクトを考慮した値を設定しましょう。

その7

「できるだけ小さい2のべき乗になるようにテクスチャをリサイズする」

小さな領域に設定するテクスチャは小さくしましょう。不必要に巨大なテクスチャはファイルダウンロード時間の面でもメモリの使用量の面でもGPUへの転送という面でも、全方位的に無駄です。またThree.jsでは任意のサイズの画像をテクスチャとして使用できますが、2のべき乗がもっともメモリ効率がよく利用にあたっての制限もないので、面倒臭がらずに事前にそのようにリサイズしておきましょう。

その8

「透明度を設定する場合はできるだけmaterial.alphaTest = 0.5を使用する」

alphaTestを設定すると、不透明度の値がそれ以下の場合は描画されなくなります。デフォルト値は0ですが、この値を0.5にすることで不透明度の低い要素が描画対象から外されます。0.5の理由はよく分かりません。1/2だから?株式会社カブクではこの疑問に答えられるメンバーを募集しています。

その9

light.shadow.mapSizeを増やす代わりに、scene.add(new THREE.CameraHelper(light.shadow.camera))を使用してシャドウマップを小さくする」

影の計算は負荷の大きな処理です。THREE.CameraHelperを使用するとカメラの視錐台を画面に表示できますが、ここにlight.shadow.cameraを渡すことで影を計算する領域を表示できます。うまく利用して計算対象の領域をできる限り小さくしましょう。

その10

「できるだけantialias: trueの代わりにFXAAShaderを使用する」

WebGLRendererには描画をアンチエイリアシングするためのantialiasプロパティがありますが、それよりもFXAAShaderを使用したほうが負荷が少ないようです。FXAAShaderの使用例は以下にあります。

まとめ

ということで、最後にもう一度10個のTipsをまとめておきます。

  1. できるだけGeometryMaterialを再利用する
  2. できるだけGeometryではなくBufferGeometryを使用する
  3. できるだけMeshBasicMaterial(ライティングを考慮しないシェーディング)とMeshLambertMaterial(頂点ごとのシェーディング)を使用する
  4. シーン内のライトは少ないほどいい
  5. できるだけシーンのライトをテクスチャに焼き込んでライトマップとして使用する
  6. camera.nearcamera.farはできるだけシーンぎりぎりになるように維持する。1単位が1メートルであることも覚えておく
  7. できるだけ小さい2の累乗になるようにテクスチャをリサイズする
  8. 透明度を設定する場合はできるだけmaterial.alphaTest = 0.5を使用する
  9. light.shadow.mapSizeを増やす代わりに、scene.add(new THREE.CameraHelper(light.shadow.camera))を使用してシャドウマップを小さくする
  10. できるだけantialias: trueの代わりにFXAAShaderを使用する

WebGLガチ勢にはThree.jsは冗長な処理が多くてパフォーマンスが悪いと思われがちで、正直そこは完全に否定できるものでもありません。しかしThree.jsもその特性を理解して使用することで、多くの場合は必要十分なパフォーマンスを実現できるものと考えています。

株式会社カブクではThree.jsアプリのパフォーマンスを改善してくれるメンバーとWebGLガチ勢を募集中です。

その他の記事

Other Articles

2022/06/03
拡張子に Web アプリを関連付ける File Handling API の使い方

2022/03/22
<selectmenu> タグできる子; <select> に代わるカスタマイズ可能なドロップダウンリスト

2022/03/02
Java 15 のテキストブロックを横目に C# 11 の生文字列リテラルを眺めて ECMAScript String dedent プロポーザルを想う

2021/10/13
Angularによる開発をできるだけ型安全にするためのKabukuでの取り組み

2021/09/30
さようなら、Node.js

2021/09/30
Union 型を含むオブジェクト型を代入するときに遭遇しうるTypeScript型チェックの制限について

2021/09/16
[ECMAScript] Pipe operator 論争まとめ – F# か Hack か両方か

2021/07/05
TypeScript v4.3 の機能を使って immutable ライブラリの型付けを頑張る

2021/06/25
Denoでwasmを動かすだけの話

2021/05/18
DOMMatrix: 2D / 3D 変形(アフィン変換)の行列を扱う DOM API

2021/03/29
GoのWASMがライブラリではなくアプリケーションであること

2021/03/26
Pythonプロジェクトの共通のひな形を作る

2021/03/25
インラインスタイルと Tailwind CSS と Tailwind CSS 入力補助ライブラリと Tailwind CSS in JS

2021/03/23
Serverless NEGを使ってApp Engineにカスタムドメインをワイルドカードマッピング

2021/01/07
esbuild の機能が足りないならプラグインを自作すればいいじゃない

2020/08/26
TypeScriptで関数の部分型を理解しよう

2020/06/16
[Web フロントエンド] esbuild が爆速すぎて webpack / Rollup にはもう戻れない

2020/03/19
[Web フロントエンド] Elm に心折れ Mint に癒しを求める

2020/02/28
さようなら、TypeScript enum

2020/02/14
受付のLooking Glassに加えたひと工夫

2020/01/28
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2020冬

2020/01/30
Renovateで依存ライブラリをリノベーションしよう 〜 Bitbucket編 〜

2019/12/27
Cloud Tasks でも deferred ライブラリが使いたい

2019/12/25
*, ::before, ::after { flex: none; }

2019/12/21
Top-level awaitとDual Package Hazard

2019/12/20
Three.jsからWebGLまで行きて帰りし物語

2019/12/18
Three.jsに入門+手を検出してAR.jsと組み合わせてみた

2019/12/04
WebXR AR Paint その2

2019/11/06
GraphQLの入門書を翻訳しました

2019/09/20
Kabuku Connect 即時見積機能のバックエンド開発

2019/08/14
Maker Faire Tokyo 2019でARゲームを出展しました

2019/07/25
夏休みだョ!WebAssembly Proposal全員集合!!

2019/07/08
鵜呑みにしないで! —— 書籍『クリーンアーキテクチャ』所感 ≪null 篇≫

2019/07/03
W3C Workshop on Web Games参加レポート

2019/06/28
TypeScriptでObject.assign()に正しい型をつける

2019/06/25
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2019夏

2019/06/21
Hola! KubeCon Europe 2019の参加レポート

2019/06/19
Clean Resume きれいな環境できれいな履歴書を作成する

2019/05/20
[Web フロントエンド] 状態更新ロジックをフレームワークから独立させる

2019/04/16
C++のenable_shared_from_thisを使う

2019/04/12
OpenAPI 3 ファーストな Web アプリケーション開発(Python で API 編)

2019/04/08
WebGLでレイマーチングを使ったCSGを実現する

2019/03/29
その1 Jetson TX2でk3s(枯山水)を動かしてみた

2019/04/02
『エンジニア採用最前線』に感化されて2週間でエンジニア主導の求人票更新フローを構築した話

2019/03/27
任意のブラウザ上でJestで書いたテストを実行する

2019/02/08
TypeScript で “radian” と “degree” を間違えないようにする

2019/02/05
Python3でGoogle Cloud ML Engineをローカルで動作する方法

2019/01/18
SIGGRAPH Asia 2018 参加レポート

2019/01/08
お正月だョ!ECMAScript Proposal全員集合!!

2019/01/08
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2018秋

2018/12/25
OpenAPI 3 ファーストな Web アプリケーション開発(環境編)

2018/12/23
いまMLKitカスタムモデル(TF Lite)は使えるのか

2018/12/21
[IoT] Docker on JetsonでMQTTを使ってCloud IoT Coreと通信する

2018/12/11
TypeScriptで実現する型安全な多言語対応(Angularを例に)

2018/12/05
GASでCompute Engineの時間に応じた自動停止/起動ツールを作成する 〜GASで簡単に好きなGoogle APIを叩く方法〜

2018/12/02
single quotes な Black を vendoring して packaging

2018/11/14
3次元データに2次元データの深層学習の技術(Inception V3, ResNet)を適用

2018/11/04
Node Knockout 2018 に参戦しました

2018/10/24
SIGGRAPH 2018参加レポート-後編(VR/AR)

2018/10/11
Angular 4アプリケーションをAngular 6に移行する

2018/10/05
SIGGRAPH 2018参加レポート-特別編(VR@50)

2018/10/03
Three.jsでVRしたい

2018/10/02
SIGGRAPH 2018参加レポート-前編

2018/09/27
ズーム可能なSVGを実装する方法の解説

2018/09/25
Kerasを用いた複数入力モデル精度向上のためのTips

2018/09/21
競技プログラミングの勉強会を開催している話

2018/09/19
Ladder Netwoksによる半教師あり学習

2018/08/10
「Maker Faire Tokyo 2018」に出展しました

2018/08/02
Kerasを用いた複数時系列データを1つの深層学習モデルで学習させる方法

2018/07/26
Apollo GraphQLでWebサービスを開発してわかったこと

2018/07/19
【深層学習】時系列データに対する1次元畳み込み層の出力を可視化

2018/07/11
きたない requirements.txt から Pipenv への移行

2018/06/26
CSS Houdiniを味見する

2018/06/25
不確実性を考慮した時系列データ予測

2018/06/20
Google Colaboratory を自分のマシンで走らせる

2018/06/18
Go言語でWebAssembly

2018/06/15
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2018春

2018/06/08
2018 年の tree shaking

2018/06/07
隠れマルコフモデル 入門

2018/05/30
DASKによる探索的データ分析(EDA)

2018/05/10
TensorFlowをソースからビルドする方法とその効果

2018/04/23
EGLとOpenGLを使用するコードのビルド方法〜libGLからlibOpenGLへ

2018/04/23
技術書典4にサークル参加してきました

2018/04/13
Python で Cura をバッチ実行するためには

2018/04/04
ARCoreで3Dプリント風エフェクトを実現する〜呪文による積層造形映像制作の舞台裏〜

2018/04/02
深層学習を用いた時系列データにおける異常検知

2018/04/01
音声ユーザーインターフェースを用いた新方式積層造形装置の提案

2018/03/31
Container builderでコンテナイメージをBuildしてSlackで結果を受け取る開発スタイルが捗る

2018/03/23
ngUpgrade を使って AngularJS から Angular に移行

2018/02/14
C++17の新機能を試す〜その1「3次元版hypot」

2018/01/17
時系列データにおける異常検知

2018/01/11
異常検知の基礎

2018/01/09
three.ar.jsを使ったスマホAR入門

2017/12/17
Python OpenAPIライブラリ bravado-core の発展的な使い方

2017/12/15
WebAssembly(wat)を手書きする

2017/12/14
AngularJS を Angular に移行: ng-annotate 相当の機能を TypeScrpt ファイルに適用

2017/12/08
Android Thingsで4足ロボットを作る ~ Android ThingsとPCA9685でサーボ制御)

2017/12/06
Raspberry PIとDialogflow & Google Cloud Platformを利用した、3Dプリンターボット(仮)の開発 (概要編)

2017/11/20
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2017秋

2017/10/19
Android Thingsを使って3Dプリント戦車を作ろう ① ハードウェア準備編

2017/10/13
第2回 魁!! GPUクラスタ on GKE ~PodからGPUを使う編~

2017/10/05
第1回 魁!! GPUクラスタ on GKE ~GPUクラスタ構築編~

2017/09/13
「Maker Faire Tokyo 2017」に出展しました。

2017/09/11
PyConJP2017に参加しました

2017/09/08
bravado-coreによるOpenAPIを利用したPythonアプリケーション開発

2017/08/23
OpenAPIのご紹介

2017/08/18
EuroPython2017で2名登壇しました。

2017/07/26
3DプリンターでLチカ

2017/07/03
Three.js r86で何が変わったのか

2017/06/21
3次元データへの深層学習の適用

2017/06/01
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2017春

2017/05/08
Three.js r85で何が変わったのか

2017/04/10
GCPのGPUインスタンスでレンダリングを高速化

2017/02/07
Three.js r84で何が変わったのか

2017/01/27
Google App EngineのFlexible EnvironmentにTmpfsを導入する

2016/12/21
Three.js r83で何が変わったのか

2016/12/02
Three.jsでのクリッピング平面の利用

2016/11/08
Three.js r82で何が変わったのか

2016/12/17
SIGGRAPH 2016 レポート

2016/11/02
カブクエンジニア開発合宿に行ってきました 2016秋

2016/10/28
PyConJP2016 行きました

2016/10/17
EuroPython2016で登壇しました

2016/10/13
Angular 2.0.0ファイナルへのアップグレード

2016/10/04
Three.js r81で何が変わったのか

2016/09/14
カブクのエンジニアインターンシッププログラムについての詩

2016/09/05
カブクのエンジニアインターンとして3ヶ月でやった事 〜高橋知成の場合〜

2016/08/30
Three.js r80で何が変わったのか

2016/07/15
Three.js r79で何が変わったのか

2016/06/02
Vulkanを試してみた

2016/05/20
MakerGoの作り方

2016/05/08
TensorFlow on DockerでGPUを使えるようにする方法

2016/04/27
Blenderの3DデータをMinecraftに送りこむ

2016/04/20
Tensorflowを使ったDeep LearningにおけるGPU性能調査

→
←

関連職種

Recruit

→
←

お客様のご要望に「Kabuku」はお応えいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。

お電話でも受け付けております
03-6380-2750
営業時間:09:30~18:00
※土日祝は除く